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特許権を共有名義にした場合の「持分」の落とし穴

2015年09月16日 | 特許・実用新案

特許権を2社以上の共有名義にする場合、各共有者の持分を設定することができます。
例えば、A社とB社の共有名義の特許権について、A社が70、B社が30といったように設定します。

先日、このような事例がありました。

A社とB社の共有名義の特許権について、A社がC社にライセンスを設定しようとしたときに、B社から「それは困る」とストップがかかりました。
特許法では、A社は、B社の同意がなければ他社にライセンスを設定することができないので、B社からストップがかかればライセンスは設定できません。

これに対し、A社も、B社の主張はおかしいといいました。

理由は、こうです。
特許権の持分は、A社が51、B社が49に設定されているのだから、A社が主導権を握れるはずではないかというものです。

しかし、これは、大きな勘違いです。
聞けば、A社は、株式を51%保有していれば株主総会で普通決議事項などを単独で可決・否決できることと同じだと考えていたようです。

共有の持分は、株式の持分とはまったく関係ありません。

A社がC社にライセンスを設定する場合は、B社の同意が必要ですが、この場合に持分の多い少ないは関係ありません。
仮にB社の持分が1であろうが、C社へのライセンスに同意できない場合は、同意しないことができます。

では、共有の持分とはどういう意味があるのでしょうか。
それは、特許権の価値を金銭で計算する場合に、持分に応じた利益や負担を計算するときに用いられます。

例えば、共有名義の特許権を取得するのに手続に100万円要した場合、A社は100万円×51%=51万円を、B社は100万円×49%=49万円をそれぞれ負担することになります。

また、共有名義の特許権を5000万円で売却した場合、A社は5000万円×51%=2550万円を、B社は5000万円×49%=2450万円をそれぞれ得ることになります。

このように、共有の持分は、特許権の価値を金銭で計算する場合に用いられるものであり、特許権への支配力には何ら関係がないものなのです。

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平成28年弁理士試験短答試験の合格発表に、思う

2016年06月17日 | その他

受験生への応援ブログになっているのでしょうか。
弁理士試験の記事は比較的人気のあるテーマになっています。

先週、弁理士試験短答試験の合格発表がありました。
ここ最近の発表には驚かされることばかりです。
私の受験時代とは状況が一変しているからです。

今回驚いたのは、合格者数が少ないことです。
私の受験時代は、受験者数が約10,000名であったのに対し、今年の受験者数は、その5割超減の4,600名ですから、短答試験の合格者も、大体5割減くらいと思っていました。

ところが、結果を見てみると、合格者は僅か557名。
えっ、1次試験なのに、私の受験時代の最終(3次試験)合格者数よりも少ないのです。

5割減どころではありません。
私の受験時代は短答試験の合格者数が2,800名ですから、577名というと、約8割減の計算になります。

その要因の一つは、短答試験の免除制度が導入されたことがあります。
短答試験に一旦合格すると、その後2年間、短答試験が免除となります。

そのため、2次試験である論文試験は、短答試験の今年の合格者のほか、短答試験の免除者が受験することになります。

短答試験合格という出口は、2割減になったのですが、論文試験受験という入り口は、免除者を加えると私の受験時代とほぼ同じくらいの割合になります。

免除制度が導入され、勉強が集中的に行えるようになったメリットはあります。
しかし一方で、1次試験の合格の門戸が狭くなるとともに集中的に勉強して挑む受験生が増えることから受験生の水準が高くなるので、参入が大変になったというデメリットもあります。

弁理士試験に限らず国家資格の試験制度は、その時代のニーズ等に合った最適な人材を輩出するように設計されるものですから、求められる点においてバランスをとれる受験生が合格していくのだと思います。

そんななか、今年の短答試験で導入されたのが「個別足切り制度」です。

短答試験は合格基準点というものが設定されています。
合計の得点がそれ以上であれば合格、それを下回れば不合格という採点基準になっており、「全体の足切り制度」は以前からありました。
今回導入される「個別足切り制度」は、各教科ごとに合格基準点が設定され、各教科の得点が各教科の合格基準点を下回れれば、合計の得点がどんなに高くても不合格という採点基準です。

何の意味があるのだろうか、と考えてみました。
というのも、私自身、特定の教科を捨て、他の教科の合計で高い点数を取るという戦略で挑んだ経験がないからです。

しかし、聞いた話では、例えば、条約や著作権などは範囲が広い割に配点が少ないので、これらを捨ててしまうということがよくあるそうです。
極端な話、条約や著作権が0点でも、特許、意匠、商標などで高い点数を取り、合計の得点が合格基準点を超えるように勉強するやり方も、ありだったわけです。
なぜそれができるのかというと、条約や著作権は、2次試験、3次試験で出題されず、1次試験きりの教科なので、捨てても後で足を引っ張らないからです。

こうした試験制度は、私の受験時代でも同じでした。
でも、私は、特定の教科を捨てるという戦略を取りませんでした。
それは、弁理士試験で問われることはすべて、弁理士試験に合格した後にお客様を支援するために必要で大切な知識だと思っていたからです。

もちろん、限られてた時間のなかで、各教科にリソースを配分しながら勉強しなければいけません。
ビジネスでは、自分が苦手なところに敢えてリソースを割かず、自分が得意なところが際立つようにリソースを分配するやり方もあります。
しかし、弁理士試験は、苦手なところがあってはいけません。
すべての教科がバランスよくできることが求められているので、ミスをしない戦略を取ることが重要です。

合格して初めて実感として分かったのですが、それは、弁理士試験で問われることはすべて、弁理士試験に合格した後にお客様を支援するために必要で大切な知識だからです。
このとき初めて、受験時代に目的意識をもってしっかりと取り組んでいたこととが、本当の意味で実を結んだと感じました。

今でも私はお客様との打ち合わせには条文集を片手に持っています。
何年も前に徹底的に詰め込んだ条文の知識が頭のなかで体系化されているので、条文集の助けを借りれば、大抵の問題はその場で解決できます。

受験の最中は本当に大変で、合格のことしか頭にないかもしれません。
ですが、受験をしている「今」が合格後の「未来」につながっているので、今を大切に過ごすことが、弁理士として意義ある未来を切り拓くことにつながるはずです。

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平成28年弁理士試験統計発表に、思う

2016年05月23日 | その他

先週、平成28年弁理士試験の統計が発表されました。
今年も受験者数が一層減少したことに驚いています。

弁理士試験の受験者数は、10,494名だった平成20年をピークに毎年減少し続けています。
そして、今年はついに、記録が残っている平成10年以降では、最も少なかった平成10年が4,650名だったのに対し、今年は4,679名とほぼ同じ水準になっています。

受験者数の減少要因については、特許庁の弁理士制度小委員会で次のような指摘がされています。

1.特許出願件数が減っている一方で、弁理士数が増えているため、弁理士の志願者数が減るのは仕方がない。

2.かつての試験は、難しい試験だが一度資格を得れば十分な職が育まれるという意識があった。しかし競争原理を徹底した結果、必ずしもそうなっていない。

3.志願者数の大幅減は、日本弁理士会において、弁理士の魅力をアピールする努力が足りなかったことが一因である。

私は、新卒で知的財産の業界に飛び込んで20年以上経ちますが、知的財産を取り扱うのは、未だにとても難しいと感じています。
だから、他人(企業)の知的財産を取り扱うことを仕事にするには、高度な知識を身につけた人だけができるようにと、その登竜門として弁理士試験が設けられています。

弁理士試験を突破するには、合格者ですら4~5年かかるわけですから、合格だけを考えてひたすら勉強をし続けます。
そうした血のにじむ努力の上で試験を突破すると、いつの間にかあたかも合格が目的であったかのような思い込みに考えが支配されてしまいがちです。

しかし、その思いとは裏腹に、弁理士の資格はあくまで知的財産の仕事をしてもよいという免許にすぎません。
自動車で例えれば運転免許を手に入れたのと同じです。

知的財産を取り扱う仕事で重要なことは、特許などの手続ができることではなく、知的財産を保護、活用し事業の発展というゴールにクライアントを導くことだと考えます。
自動車で例えれば、運転できること自体が重要なのではなく、目的地まで連れて行くことが重要です。(もっといえば、専門家に依頼する以上、目的地に時間内に辿り着くこと、自社で行うよりは低コストで辿り着くことが求められます。)

知的財産を保護、活用する場合に、知的財産権をどのように手当てするかについては何通りもの選択肢があります。
どれを選べば正解なのかは、企業は容易には分かりません。
ましてやどのような方針で選択を行っていけば、事業の発展というゴールに辿り着くのかまで把握できている企業は、おそらく少数でしょう。

その大きな要因は2つあります。

1つは、知的財産が目に見えず、把握しにくいものであることです。

そしてもう一つは、知的財産を保護、活用した結果、自社や他社の事業にどのような影響が出るかが推測しにくいことです。
このボタンを押せばこのランプが光るというようにボタンとランプの関係がはっきりと把握できる場合は、光らせたいランプに対応するボタンだけを効率的に押していけばよいのです。
ところが、知的財産の場合は、保護や活用などの「施策」と、事業への影響という「効果」の対応関係がとても分かりにくいのです。

こうしたことを考えると、企業が弁理士に期待する役割の一つは、知的財産の水先案内人としての役割です。
つまり、「私は、このランプを光らせたいので、どのボタンを押せばいいか教えてほしい。」という質問に対し、「このボタンです。」と適確に答えられることです。
知的財産の知識がより少ない企業についていえば、「私は、事業の発展というゴールに辿り着くためにどのランプを光らせたらいいか分からないが、ゴールに辿り着きたいので、どのボタンを押せばいいか教えてほしい。」という質問に対し、「これとこれとこのボタンです。」と適確に答えられることです。

しかしこれに対し、合格を目的に位置づけてしまうと、車の運転はできるが、目的地に連れて行ってあげることができない状況に陥ってしまいます。

知的財産の水先案内人としての役割を期待されているのに、目的地に連れて行ってあげることができないのであれば、そこには大きなギャップが生まれます。
ボタンを押す指示を企業に行わせ、指示されたボタンだけを押すという仕事の仕方では、事業活動のなかで知的財産を活きたツールとして活用していく循環を生み出すことは難しいでしょう。

弁理士の側でここがきちんとできなければ、知的財産の業界がうまく機能しないことは明らかです。
業界が機能不全になれば、勉強に4~5年も時間をかけてまでこの業界に飛び込もうと思う人が少なくなるのはある意味必然な流れなのかもしれません。

弁理士を育成するプログラムを強化すればいいというような簡単なことではないと思います。
ですが、私にもできることはあります。知的財産の水先案内人としての役割を果たし、時にはその知識や経験を後輩に伝えながら、知的財産の業界がきちんと機能するように業界の一員としての役割を全うすることです。

弁理士試験の受験者数は、知的財産の業界がきちんと機能しているかどうかを推し量る一つのバロメータですから、受験者数が増えるように日々頑張っていきたいと思います。

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IoTの商標登録はどの区分?

2017年01月24日 | 商標

本日は、IoTの商標登録についてお話しします。
IoTの商標登録を取得しようとする場合、どの商品・サービスの区分で商標登録を取得したらよいのでしょうか。

商品・サービスと区分とは

商標登録を取得するときは、商標を使用する商品やサービスを指定します。
商標登録が取得できると、出願のときに指定した商品・サービスについて商標を独占的に使用することができるようになります。
この商品・サービスは、特許庁が「区分」という分類で整理しています。商品・サービスを指定する場合、どの区分に分類された商品・サービスであるかが分かるように、区分も併せて指定します。

それでは、IoTの商標登録は、どの区分に分類された商品・サービスを指定すればよいのでしょうか。これが今回の記事でお伝えするテーマです。

自動車IoTの事例

これを分かりやすくお伝えするために、事例を挙げて説明します。
以下の事例は、福岡工業大学が取得した自動車IoTの特許です。

仕組みを簡単に説明します。
このIoTは、自動車にセンサーを取り付け、センサーから取得した情報をもとに津波を観測するというものです。
一体どうやって津波を観測するのでしょうか。

まず、自動車に角速度センサーを取り付けます。
角速度センサーというのは、分かりやすくいえば自動車がスピンしたことを検出するセンサーです。
自動車が津波に遭遇し浸水すると自動車がスピンするので、角速度センサーからの情報により津波に遭遇したと判定することができます。

つまり、複数の自動車のセンサーから情報を集め、自動車の位置情報と照らし合わせコンピュータ上でマッピングすると、津波がどの地域にどの規模で押し寄せているのかが分かります。

このような浸水マップを避難区域のユーザに配信して共有すれば、津波を避けて避難することができます。

商品・サービスが何かを考える

商標登録を取得するときは、商標を使用する商品やサービスを指定する必要があるので、上記IoTシステムにおいて商標を使用したい商品・サービスが何であるかを考える必要があります。

まず、分かりやすく、上記IoTシステムを3社が共同で実現していると仮定しましょう。
A社は、自動車メーカです。
B社は、センサーのメーカです。
C社は、クラウドサービスを提供するASP(Application Service Provider)です。

そして、上記IoTシステムについて使用したい商標を「ツナミクル」とします。

では、A社を見てみましょう。
A社は、自動車を製造・販売しています。
A社が取り扱う商品は「自動車」です。
もし自動車の製品名として「ツナミクル」を使いたい場合は、商品として「自動車」を指定します。

次に、B社を見てみましょう。
B社は、角速度センサーを開発し、角速度センサーを自動車に取り付け、位置情報を収集します。
B社が取り扱う商品は「角速度センサー」です。
もし角速度センサーの製品名として「ツナミクル」を使いたい場合は、商品として「角速度センサー」を指定します。
また、B社が取り扱うサービスは「位置情報の収集」です。
もし位置情報を収集するサービス名として「ツナミクル」を使いたい場合は、サービスとして「位置情報の収集」を指定します。

次に、C社を見てみましょう。
C社は、位置情報をデータベースに記録・分析し、津波が発生したときに津波マップを生成し提供します。
C社が取り扱うサービスは「クラウドコンピューティング」です。
もしクラウドコンピューティングのサービス名として「ツナミクル」を使いたい場合は、サービスとして「クラウドコンピューティング」を指定します。
またC社は、ユーザが利用するスマホアプリを提供している場合、その取り扱い商品は「スマホアプリ」です。
もしスマホアプリの名称として「ツナミクル」を使いたい場合は、商品として「スマホアプリ」を指定します。

商品・サービスが洗い出せたので、このなかから「ツナミクル」を使用する必要な商品・サービスを選んで指定すればよいのです。
もう一つの観点として、自社としては使用しない商品かもしれませんが、他社がその商品に「ツナミクル」を使うとユーザが混同することが予想される場合は、その商品も含めるかどうかを検討します。

さて、以上は3社が共同で実現した例を説明しました。
1社・2社で実現する場合、又は4社以上で実現する場合も、これと同じ考え方で商品・サービスを洗い出せばよいでしょう。

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他人の商標の引用

2012年06月03日 | 商標

よく、「※iPhone、iPad、及びAppleロゴは、米国Apple Inc.の米国及びその他の国における登録商標又は商標です。」という表記を見かけませんか。
この表記は、記事やカタログ等で他人の商標が引用されている場面において見かけることがあります。

この表記の位置づけはどういうことなのでしょうか。
この表記を付しておけば、他人の商標を「使用」することが認められるのでしょうか。
この点は、著作権法上の引用と誤解がある点です。

他人の登録商標は、権利者から許諾を得ない限り、識別標識として機能するような使い方は認められません。
例えば、アサヒグループホールディングス株式会社の許諾なく、自社の缶ビールに「スーパードライ」と大きく表示し、裏面に、「※スーパードライはアサヒグループホールディングス株式会社の登録商標です。」と表記しても、認められません。

では、上記のような表記は、どういう場面で使われているのかといいますと、記事やカタログの文中で他人の商標を引用して特定業者の商品を指し示す場合です。
例えば、「アサヒビール株式会社が製造・販売する辛口ビール」と表記するよりも「スーパードライ」と表記した方が、商品の内容を端的に伝えることができます。

このような場合は、商品やサービスとの関連性がないかたちで他人の商標を引用することになりますので、商標法上、他人の商標の「使用」ということにはならないのです。

ただし、消費者が、文中の商標を見て、特定業者の商品を指し示しているのか、そうではなく商品の普通名称を指しているのかを区別できるかどうかは重要な問題です。
登録商標があたかも商品の普通名称であるかのような使い方をされると、商標としての機能が失われてしまいますので、他人の商標を文中で引用するときは、その権利者に配慮して「普通名称ではありません。」という断り書きを入れるのがマナーとなっています。
それが冒頭の表記ということになります。

※商標法上の「使用」と混同することを避けるため、本記事中では、そうでない使い方を「引用」と表記しています。



AI弁理士、誕生!?

2016年06月03日 | 知的財産

「将来、AI(人工知能)によってなくなる職業に弁理士が入っているぞ。」という話を聞いたので、該当の記事を読んでみると、「弁理士などは機械にとって代わられる可能性が高い」とひと言、理由の説明もなく冷たく列挙されていました。

「自分の職業がなくなるかも」という身につまされる話を聞いたので、まじめにAIの可能性について考えてみました。

知的財産の仕事には、単純な作業も一部にあります。
一定の様式に従って決まった事項を記載するような作業です。
こういった単純な作業は、タイプライターがワープロに置き換わったように、AIにどんどんとって変わられる作業ではないかと思います。

しかし、単純な作業が簡単になったからといって、弁理士の職業がなくなるという結論には遙かな距離を感じます。
タイプライターがワープロに置き換わっても、ライターの仕事がなくならなかったのと同じだからです。

知的財産の仕事のなかで難しく時間や労力がかかるのが「判断」のところです。
例えば、商標登録の話でいえば、この商標が単なる品質表示にあたるのか、この商標が他社の登録商標と似ているのか、この商標が広く知られているのか、他社の商品と混同するかどうか、他社の商標権を侵害しているかどうかなどです。

弁理士の職業がなくなるというのは、この「判断」までもAIにとって変わられることを意味しているのでしょうか?
事業活動のなかには知的財産の創造・保護・活用のシーンがありますが、これらのシーンにおいて「判断」が不要になるのであれば、なくなるのは、弁理士どころの話ではありません。

特許庁も当然不要です。
例えば、特許庁の前にポストを置いておいて、そこに商標を書いた紙を入れると、AIが分析し、最適な商標について自動的に商標登録を付与してくれるようになります。
商標登録できない商標であれば、商標登録できる商標に変更し、それを商標登録してくれるわけです。(商標登録できる商標をAIが提案するシステムだと、それを採用するかどうかの「判断」が必要となるので、究極は勝手に変更するということに行き着くでしょう。)

知的財産の裁判所も不要になります。
同様に、裁判所の前にポストをおいておいて、そこに自分の登録商標と相手方の商標を書いた紙を入れると、AIが分析し、商標権の侵害かどうかをジャッジしてくれるようになるからです。

本当にそこまで現実的な将来として想定されているのだろうか?と疑問に思いました。

上記記事を見渡すと、「弁護士などは代替リスクが低い」とされており、その明確な理由は示されていませんが、弁護士は、ある行為や事実が法律の規定に該当するかどうかを判断することに高度な専門性を有する職業ですから、その根幹部分がAIにとって変わられにくいと判断されている、と考えられます。

商標登録を受けられるかどうかの判断や商標権を侵害するかどうかの判断は、同じような判断を必要とするものですから、弁護士の判断をAIに置き換えるのが難しいのだとすれば、同様に弁理士の判断も容易でないと考えることができます。

AIは万能ではありません。
計算が正確であり、大量のデータを処理できる点で優れているツールではありますが、人間と同じように、AIにできることもあればできないこともあります。

AIにできる部分はAIに置き換わるでしょう。
しかし、人はうまい生き物で、AIと戦うことを選択するのではなく、そこはAIに任せ、人にしかできない作業に特化して進化していく、環境適応能力に長けた生き物だと思います。
この点も、創造性と社会的知性と並んでAIとは異なる人の優れた能力であるということがいえます。

それを考えると、現在行っている弁理士の仕事の多くがAIに置き換わるかもしれませんが、弁理士も、そうしたAIのインフラの上に、人にしかできない知的財産の仕事を行っていくように業態が移り変わっていくでしょう。
AIによって弁理士の業態が変わることはあっても、弁理士がAIに置き換わるというほど神格化される技術ではないと考えます。もちろん、他の多くの職業についても同様です。

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脱獄「中古品はOK。でも」

2016年10月26日 | 商標

本日は、先のブログ「脱獄『改造品に商標を使うと品質が損なわれる』」の続きです。

さて、この話には、境界線があります。
それは、中古品の販売です。

中古品は、他社の商標がそのまま付されて販売されるものですが、品質の点でいえば、新品に対して消費者が認識する品質と、中古品の品質は当然異なるので、先ほどの話でいけば、商標権侵害ではないかということになります。

しかし、中古品も新品同様に、商標権侵害にはならないとされています。
使用による劣化や経年劣化により品質が異なっていることは消費者が理解して購入しているので、品質に誤解が生じないと考えられるためです。

しかし、これはあくまで境界線であって、例えば、消費者が割り引いて認識する品質を下回るほど、改造や修理が施された商品を販売する場合は、商標権侵害になる可能性があります。

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店の外観は知的財産になる?コメダ珈琲事件を振り...

2017年04月19日 | 知的財産

本日は、先のブログ「店の外観が似ているとして『や台ずし』が『磯丸すし』を提訴」の続きです。

コメダ珈琲事件でも、今回の事件と同様に、店の外観が似ているとして争われました。

コメダ珈琲店は、ブランド化の取り組みの一つとして、統一的なコンセプトで人目を引く独自のデザインを施した喫茶店の外観を作り上げ、同じデザインの喫茶店を各地で展開するという取り組みを行っています。

このブランド化の取り組みのなかでは、独自のデザインが施された喫茶店の外観を顧客に覚えてもらい、顧客が喫茶店の外観を見たときにコメダ珈琲店やそこでのサービスを一緒に思い出してもらい、喫茶店に立ち寄ってもらうという導線を作り上げています。

したがって、コメダ珈琲店の外観は、コメダ珈琲店が企業努力によりよいサービスを顧客に提供することにより、顧客から得た評判(ブランド)を覚えておいてもらう大切な「しるし」になります。

一つの「しるし」に対し、一つのブランドが紐付いている状態であれば、その「しるし」を見た顧客は、コメダ珈琲店のことを思い出します。

しかし、一つの「しるし」に対し、2つ以上のブランドが紐付いている状態になると、その「しるし」を見ても、顧客はどのブランドか区別することができません。

より悪いことには、他の喫茶店をコメダ珈琲店と間違えてしまう、という事態が生じてしまいます。

ですから、コメダ珈琲店としては、コメダ珈琲店の外観は、顧客が再びコメダ珈琲店を利用してもらうための重要な知的財産であり、他社にマネされては困るわけです。

そこで、コメダ珈琲店は、コメダ珈琲店の外観にそっくりなデザインを施して、喫茶店を展開する他社を訴えたというわけです。

先のブログでお話したとおり、これまで店の外観を知的財産と位置づけて争われた例は多くありません。

この事件でポイントとなった点は、店の外観が、顧客が再びコメダ珈琲店を利用してもらうための重要な「しるし」として機能しているかどうか、そして店の外観が有名であるかどうかでした。

この点、裁判所は、いずれもコメダ珈琲店の主張を認め、店の外観を変更することを命じました。

コメダ珈琲事件をきっかけに、店の外観も知的財産として保護される流れが生まれました。

今回の事件は、まさにコメダ珈琲事件と同様に、店の外観が似ているとして、や台ずし店が磯丸すし店を訴えたという内容ですから、コメダ珈琲事件の流れを受けているといえます。

次回は、「米国で店の外観は『トレードドレス』として保護」についてお話しします。

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著作物を改変できるかどうかについての権利

2015年10月08日 | 著作権

著作権法では、著作物を改変できるかどうかについての権利が定められています。

著作物を改変されない権利として、「同一性保持権」があります。

これに対し、著作物を改変できる権利として、「翻案権」があります。

これらの権利を同じ人が持っている場合は、特に問題はないのですが、著作物を改変されない権利である「同一性保持権」と、著作物を改変できる権利である「翻案権」を別々の人が持つことになると、問題が生じます。

どういった問題かというと、著作者であるAさんから「翻案権」を譲ってもらったBさんは、著作物を改変して使いたいと考えているところ、「同一性保持権」を持っているAさんは、その著作物を改変せずそのまま使ってほしいと考えている場合、どういった場合に改変ができて、どういった場合に改変ができないのかといった問題です。
これをきちんと線引きしないとトラブルの原因になってしまいます。

考え方としては、3つあります。

1つ目は、翻案権を持っていたとしても、翻案権の範囲で著作物を改変することは著作物の同一性を損なうことになるので、同一性保持権の侵害となるという考えです。
したがって、Bさんが翻案権を持っていても、翻案権の範囲で著作物を改変するには、Aさんの承諾が必要になり、Aさんの意に反してまで改変することはできないということになります。

2つ目は、翻案権を譲渡したのだから、同一性保持権はある程度制約を受けるという考えです。
すなわち、翻案権の範囲で行える改変のうち、著作者の人格的利益を害しないような改変であれば、同一性保持権を持っている人の承諾なしにできるというものです。

3つ目は、同一性保持権は当然に制約を受けるという考えです。
すなわち、翻案権を譲渡した以上、翻案権の範囲で著作物を改変することは、同一性保持権が制限される「やむを得ないと認められる改変」(著作権法20条2項4号)として認められるというものです。

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ネーミング採用の留意点~造語商標~

2015年08月25日 | 商標

先のブログ「ネーミング採用の留意点」では、ネーミングの分類として、「造語商標」「恣意的商標」「暗示的商標」「記述的商標」「一般名称」の5つがあることをお話ししました。
本日は、このうち「造語商標」についてお話しします。

造語商標とは、意味を持たない創造された言葉からなる商標です。

ソニー、パナソニックなどが造語商標の例になります。
「ソニー」や「パナソニック」という言葉は、何かを意味する言葉としては辞書に掲載されておらず、ソニー株式会社等が作った独自の言葉となります。

造語商標は、顧客に覚えてもらえにくく認知に時間がかかる反面、知られてくると、他に似た言葉がないので強烈に記憶されるという点で優れています。
また、商標登録の可能性が高く、強い権利であるというメリットがあります。

まとめると、次のとおりです。

記憶しやすさ
認知のスピード
認知後の定着性
商標登録の可否
権利の強さ