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平成28年弁理士試験統計発表に、思う

2016年05月23日 | その他

先週、平成28年弁理士試験の統計が発表されました。
今年も受験者数が一層減少したことに驚いています。

弁理士試験の受験者数は、10,494名だった平成20年をピークに毎年減少し続けています。
そして、今年はついに、記録が残っている平成10年以降では、最も少なかった平成10年が4,650名だったのに対し、今年は4,679名とほぼ同じ水準になっています。

受験者数の減少要因については、特許庁の弁理士制度小委員会で次のような指摘がされています。

1.特許出願件数が減っている一方で、弁理士数が増えているため、弁理士の志願者数が減るのは仕方がない。

2.かつての試験は、難しい試験だが一度資格を得れば十分な職が育まれるという意識があった。しかし競争原理を徹底した結果、必ずしもそうなっていない。

3.志願者数の大幅減は、日本弁理士会において、弁理士の魅力をアピールする努力が足りなかったことが一因である。

私は、新卒で知的財産の業界に飛び込んで20年以上経ちますが、知的財産を取り扱うのは、未だにとても難しいと感じています。
だから、他人(企業)の知的財産を取り扱うことを仕事にするには、高度な知識を身につけた人だけができるようにと、その登竜門として弁理士試験が設けられています。

弁理士試験を突破するには、合格者ですら4~5年かかるわけですから、合格だけを考えてひたすら勉強をし続けます。
そうした血のにじむ努力の上で試験を突破すると、いつの間にかあたかも合格が目的であったかのような思い込みに考えが支配されてしまいがちです。

しかし、その思いとは裏腹に、弁理士の資格はあくまで知的財産の仕事をしてもよいという免許にすぎません。
自動車で例えれば運転免許を手に入れたのと同じです。

知的財産を取り扱う仕事で重要なことは、特許などの手続ができることではなく、知的財産を保護、活用し事業の発展というゴールにクライアントを導くことだと考えます。
自動車で例えれば、運転できること自体が重要なのではなく、目的地まで連れて行くことが重要です。(もっといえば、専門家に依頼する以上、目的地に時間内に辿り着くこと、自社で行うよりは低コストで辿り着くことが求められます。)

知的財産を保護、活用する場合に、知的財産権をどのように手当てするかについては何通りもの選択肢があります。
どれを選べば正解なのかは、企業は容易には分かりません。
ましてやどのような方針で選択を行っていけば、事業の発展というゴールに辿り着くのかまで把握できている企業は、おそらく少数でしょう。

その大きな要因は2つあります。

1つは、知的財産が目に見えず、把握しにくいものであることです。

そしてもう一つは、知的財産を保護、活用した結果、自社や他社の事業にどのような影響が出るかが推測しにくいことです。
このボタンを押せばこのランプが光るというようにボタンとランプの関係がはっきりと把握できる場合は、光らせたいランプに対応するボタンだけを効率的に押していけばよいのです。
ところが、知的財産の場合は、保護や活用などの「施策」と、事業への影響という「効果」の対応関係がとても分かりにくいのです。

こうしたことを考えると、企業が弁理士に期待する役割の一つは、知的財産の水先案内人としての役割です。
つまり、「私は、このランプを光らせたいので、どのボタンを押せばいいか教えてほしい。」という質問に対し、「このボタンです。」と適確に答えられることです。
知的財産の知識がより少ない企業についていえば、「私は、事業の発展というゴールに辿り着くためにどのランプを光らせたらいいか分からないが、ゴールに辿り着きたいので、どのボタンを押せばいいか教えてほしい。」という質問に対し、「これとこれとこのボタンです。」と適確に答えられることです。

しかしこれに対し、合格を目的に位置づけてしまうと、車の運転はできるが、目的地に連れて行ってあげることができない状況に陥ってしまいます。

知的財産の水先案内人としての役割を期待されているのに、目的地に連れて行ってあげることができないのであれば、そこには大きなギャップが生まれます。
ボタンを押す指示を企業に行わせ、指示されたボタンだけを押すという仕事の仕方では、事業活動のなかで知的財産を活きたツールとして活用していく循環を生み出すことは難しいでしょう。

弁理士の側でここがきちんとできなければ、知的財産の業界がうまく機能しないことは明らかです。
業界が機能不全になれば、勉強に4~5年も時間をかけてまでこの業界に飛び込もうと思う人が少なくなるのはある意味必然な流れなのかもしれません。

弁理士を育成するプログラムを強化すればいいというような簡単なことではないと思います。
ですが、私にもできることはあります。知的財産の水先案内人としての役割を果たし、時にはその知識や経験を後輩に伝えながら、知的財産の業界がきちんと機能するように業界の一員としての役割を全うすることです。

弁理士試験の受験者数は、知的財産の業界がきちんと機能しているかどうかを推し量る一つのバロメータですから、受験者数が増えるように日々頑張っていきたいと思います。

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色商標、日本初の登録へ

2017年03月01日 | 商標

色商標(色彩のみからなる商標)について、特許庁が初の登録査定を出しました。

引用:色彩のみからなる商標について初の登録を行います

平成27年4月から受付を開始した新しいタイプの商標のうち、色彩のみからなる商標について、この度、初めて登録を認める旨の判断をしました。
特許庁は、色彩のみからなる商標について、(2月28日付けで)初めて2件の登録を認める旨の判断をしました。なお、これらの登録を認めた商標については、出願人から登録料が納められた後、商標登録されることになります。

詳細はこちら

登録になるのは、次の2つの色商標です。

引用:http://www.meti.go.jp/press/2016/03/20170301003/20170301003-1.pdf

色商標は、長年の使用実績がないと商標登録を受けられません。
色は商品が当然備えているものであり、消費者が色を見ただけでは、誰が作った商品なのかという連想につながらないからです。

しかし、商品に同じ色を長年使い続け知名度が高くなると、その色を見たときに多くの消費者が「これは、あの企業の商品だよね」と連想するくらい色と商品が密接に結びついている状態ができます。
そうすると、単なる商品の色というレベルを超え、誰が作った商品なのかを表す色になるので、そういうものであれば、商標登録で保護しましょうという位置づけです。

今回、商標登録となった2つの色商標は、長年使い続け高い知名度があると判断されました。
皆様もお馴染みのマークではないでしょうか。

なお、今回商標登録となったトンボ鉛筆様とは、新しいタイプの商標が導入されたときにTBSのラジオ番組「爆笑問題の日曜サンデーでご一緒させていただきました。
登録査定となりましたこと、誠におめでとうございます。

色商標に関する過去の記事「クイズ『色で企業名を当てろ!』〜色彩のみからなる商標の現状」も併せてご覧ください。

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ドメインについての法的アプローチ

2016年04月19日 | 知的財産

ドメインと商標は、比較的密接な関係にあります。
ドメインを見たときに特定の企業や商品を連想させる点で商標と同じ機能があるからです。

ドメインについては、不正競争防止法という法律で保護を受けることができますが、その前にきちんと整理しておきたいことがあります。

自社の名称や商品名に近いドメインについては、自社がそのドメインを使いたいから「ほしい」という要望と、他社がそのドメインを使ったら自社や自社の商品と混同してしまうので「守りたい」という要望があります。

この2つの要望を達成するには法的アプローチがそれぞれ異なりますので、2つの要望を混同すると、法的な手続がややこしくなってきます。

ですから、まず、自社の要望がどちらなのかをきちんと整理し把握する必要があります。
もちろんどちらか一方というのではなく、「守りたい」し「ほしい」という要望もあると思いますが、自社の要望を明確にすることで、これに対応する法的アプローチを採用するという対応につなげることが重要です。

不正競争防止法による保護は、「守りたい」という要望を達成するために受けるものですので、もし「ほしい」という要望であれば、これとは違う法的アプローチを行う必要があります。
不正競争防止法では、ドメインの移転を請求することができず、「ほしい」という要望を達成することができないからです。

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僕はペンでアッポーペン

2016年12月08日 | 商標

本日は、先のブログ「その名はアッポーペン」の続きです。

他方の彼は、自社の商品コンセプトについてこう考えました。
消しゴム付きペンというのは、消しゴムが付いているが、案外ペンに付いている消しゴムって小さくて使いづらく、逆に授業中とかに消しゴムをかじったりしてよくないんだよね。
じゃあ、こうしてはどうだろうか。
消しゴムではなく、リンゴ飴にしよう。
そうしたら、授業中とかに消しゴムではなく、リンゴ飴がかじれるので身体にもよいし、糖分頭に回って勉強にも集中できる。
で、簡単に交換できるようにすれば、消しゴムよりも売れるかも。
うん、これはいい。
ということで、消しゴム付きペンの消しゴムをリンゴ飴にした商品を売り出すことにしました。

その名前に「アッポーペン」を付け、商標登録を取得することを専門家に相談に行きました。
専門家は、こういいます。その商品は「ペン」だから「文房具」の商標として取得するとよい。
こういわれ、「文房具」について商標「アッポーペン」を取得しました。
めでたく商標登録を取得し、安心して「アッポーペン」を販売することができるようになります。

次回は、本記事の続きとして「アッポーペン使ってはならぬ、だが」についてお話します。

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磯丸すしを「外観パクリ」で訴えるや台ずしに果た...

2017年04月28日 | 知的財産

ニュースサイト「節約社長」にて、私が執筆した記事「磯丸すしを『外観パクリ』で訴えるや台ずしに果たして勝算はあるか?」が掲載されました。
商標登録、特許、知的財産に関するホットな話題を独自の視点で捉え、お伝えしています。

当事務所のホームページにも掲載しています。
ぜひご覧ください。

磯丸すしを「外観パクリ」で訴えるや台ずしに果たして勝算はあるか?

すし居酒屋「や台ずし」などを展開するヨシックスが、磯丸水産で有名なSFPダイニング(東京都)を相手取り、同社が運営する「磯丸すし」の外観の変更、損害賠償を求めて提訴しました。日本でも例が少ない、店の外観を知的財産として起こった事件の背景にはコメダ珈琲が同じ問題で提訴し、一定の成果を上げたことが深く関わっていそうです。

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脱獄「中古品はOK。でも」

2016年10月26日 | 商標

本日は、先のブログ「脱獄『改造品に商標を使うと品質が損なわれる』」の続きです。

さて、この話には、境界線があります。
それは、中古品の販売です。

中古品は、他社の商標がそのまま付されて販売されるものですが、品質の点でいえば、新品に対して消費者が認識する品質と、中古品の品質は当然異なるので、先ほどの話でいけば、商標権侵害ではないかということになります。

しかし、中古品も新品同様に、商標権侵害にはならないとされています。
使用による劣化や経年劣化により品質が異なっていることは消費者が理解して購入しているので、品質に誤解が生じないと考えられるためです。

しかし、これはあくまで境界線であって、例えば、消費者が割り引いて認識する品質を下回るほど、改造や修理が施された商品を販売する場合は、商標権侵害になる可能性があります。

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店の外観は知的財産になる?コメダ珈琲事件を振り...

2017年04月19日 | 知的財産

本日は、先のブログ「店の外観が似ているとして『や台ずし』が『磯丸すし』を提訴」の続きです。

コメダ珈琲事件でも、今回の事件と同様に、店の外観が似ているとして争われました。

コメダ珈琲店は、ブランド化の取り組みの一つとして、統一的なコンセプトで人目を引く独自のデザインを施した喫茶店の外観を作り上げ、同じデザインの喫茶店を各地で展開するという取り組みを行っています。

このブランド化の取り組みのなかでは、独自のデザインが施された喫茶店の外観を顧客に覚えてもらい、顧客が喫茶店の外観を見たときにコメダ珈琲店やそこでのサービスを一緒に思い出してもらい、喫茶店に立ち寄ってもらうという導線を作り上げています。

したがって、コメダ珈琲店の外観は、コメダ珈琲店が企業努力によりよいサービスを顧客に提供することにより、顧客から得た評判(ブランド)を覚えておいてもらう大切な「しるし」になります。

一つの「しるし」に対し、一つのブランドが紐付いている状態であれば、その「しるし」を見た顧客は、コメダ珈琲店のことを思い出します。

しかし、一つの「しるし」に対し、2つ以上のブランドが紐付いている状態になると、その「しるし」を見ても、顧客はどのブランドか区別することができません。

より悪いことには、他の喫茶店をコメダ珈琲店と間違えてしまう、という事態が生じてしまいます。

ですから、コメダ珈琲店としては、コメダ珈琲店の外観は、顧客が再びコメダ珈琲店を利用してもらうための重要な知的財産であり、他社にマネされては困るわけです。

そこで、コメダ珈琲店は、コメダ珈琲店の外観にそっくりなデザインを施して、喫茶店を展開する他社を訴えたというわけです。

先のブログでお話したとおり、これまで店の外観を知的財産と位置づけて争われた例は多くありません。

この事件でポイントとなった点は、店の外観が、顧客が再びコメダ珈琲店を利用してもらうための重要な「しるし」として機能しているかどうか、そして店の外観が有名であるかどうかでした。

この点、裁判所は、いずれもコメダ珈琲店の主張を認め、店の外観を変更することを命じました。

コメダ珈琲事件をきっかけに、店の外観も知的財産として保護される流れが生まれました。

今回の事件は、まさにコメダ珈琲事件と同様に、店の外観が似ているとして、や台ずし店が磯丸すし店を訴えたという内容ですから、コメダ珈琲事件の流れを受けているといえます。

次回は、「米国で店の外観は『トレードドレス』として保護」についてお話しします。

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平成28年弁理士試験短答試験の合格発表に、思う

2016年06月17日 | その他

受験生への応援ブログになっているのでしょうか。
弁理士試験の記事は比較的人気のあるテーマになっています。

先週、弁理士試験短答試験の合格発表がありました。
ここ最近の発表には驚かされることばかりです。
私の受験時代とは状況が一変しているからです。

今回驚いたのは、合格者数が少ないことです。
私の受験時代は、受験者数が約10,000名であったのに対し、今年の受験者数は、その5割超減の4,600名ですから、短答試験の合格者も、大体5割減くらいと思っていました。

ところが、結果を見てみると、合格者は僅か557名。
えっ、1次試験なのに、私の受験時代の最終(3次試験)合格者数よりも少ないのです。

5割減どころではありません。
私の受験時代は短答試験の合格者数が2,800名ですから、577名というと、約8割減の計算になります。

その要因の一つは、短答試験の免除制度が導入されたことがあります。
短答試験に一旦合格すると、その後2年間、短答試験が免除となります。

そのため、2次試験である論文試験は、短答試験の今年の合格者のほか、短答試験の免除者が受験することになります。

短答試験合格という出口は、2割減になったのですが、論文試験受験という入り口は、免除者を加えると私の受験時代とほぼ同じくらいの割合になります。

免除制度が導入され、勉強が集中的に行えるようになったメリットはあります。
しかし一方で、1次試験の合格の門戸が狭くなるとともに集中的に勉強して挑む受験生が増えることから受験生の水準が高くなるので、参入が大変になったというデメリットもあります。

弁理士試験に限らず国家資格の試験制度は、その時代のニーズ等に合った最適な人材を輩出するように設計されるものですから、求められる点においてバランスをとれる受験生が合格していくのだと思います。

そんななか、今年の短答試験で導入されたのが「個別足切り制度」です。

短答試験は合格基準点というものが設定されています。
合計の得点がそれ以上であれば合格、それを下回れば不合格という採点基準になっており、「全体の足切り制度」は以前からありました。
今回導入される「個別足切り制度」は、各教科ごとに合格基準点が設定され、各教科の得点が各教科の合格基準点を下回れれば、合計の得点がどんなに高くても不合格という採点基準です。

何の意味があるのだろうか、と考えてみました。
というのも、私自身、特定の教科を捨て、他の教科の合計で高い点数を取るという戦略で挑んだ経験がないからです。

しかし、聞いた話では、例えば、条約や著作権などは範囲が広い割に配点が少ないので、これらを捨ててしまうということがよくあるそうです。
極端な話、条約や著作権が0点でも、特許、意匠、商標などで高い点数を取り、合計の得点が合格基準点を超えるように勉強するやり方も、ありだったわけです。
なぜそれができるのかというと、条約や著作権は、2次試験、3次試験で出題されず、1次試験きりの教科なので、捨てても後で足を引っ張らないからです。

こうした試験制度は、私の受験時代でも同じでした。
でも、私は、特定の教科を捨てるという戦略を取りませんでした。
それは、弁理士試験で問われることはすべて、弁理士試験に合格した後にお客様を支援するために必要で大切な知識だと思っていたからです。

もちろん、限られてた時間のなかで、各教科にリソースを配分しながら勉強しなければいけません。
ビジネスでは、自分が苦手なところに敢えてリソースを割かず、自分が得意なところが際立つようにリソースを分配するやり方もあります。
しかし、弁理士試験は、苦手なところがあってはいけません。
すべての教科がバランスよくできることが求められているので、ミスをしない戦略を取ることが重要です。

合格して初めて実感として分かったのですが、それは、弁理士試験で問われることはすべて、弁理士試験に合格した後にお客様を支援するために必要で大切な知識だからです。
このとき初めて、受験時代に目的意識をもってしっかりと取り組んでいたこととが、本当の意味で実を結んだと感じました。

今でも私はお客様との打ち合わせには条文集を片手に持っています。
何年も前に徹底的に詰め込んだ条文の知識が頭のなかで体系化されているので、条文集の助けを借りれば、大抵の問題はその場で解決できます。

受験の最中は本当に大変で、合格のことしか頭にないかもしれません。
ですが、受験をしている「今」が合格後の「未来」につながっているので、今を大切に過ごすことが、弁理士として意義ある未来を切り拓くことにつながるはずです。

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公道を走る「マリカー」、ついに任天堂から訴えら...

2017年02月26日 | 著作権

ここ最近、知的財産がからんだ事件が多いですね。
それだけ知的財産が世間で認知されるようになってきたということでしょうか。

さて、今回取り上げるのは「マリオカート」の事件です。
ゲームの話題になると筆がとても進みます。マリオカートシリーズのファンとしては、取り上げられずにはいられません。

引用:公道を走る「マリカー」、ついに任天堂から訴えられる…著作権侵害など

任天堂(京都市)は2月24日、公道カートのレンタル会社「株式会社マリカー」が、マリオなどのキャラクターの衣装を貸し出したうえで、その画像を許諾なしに宣伝・営業に利用し、著作権などを侵害しているとして、損害賠償1000万円(一部請求)を求めて東京地裁に提訴した。

コスプレというと、個人的に衣装を作ってイベントで披露して楽しむというのが一般的なイメージです。
こうした個人で楽しむ小規模な範囲についてはこれまでメーカーが声を上げることはあまりなかったように思います。

ところが、報道で提訴されたとする「株式会社マリカー」は、ビジネスとしてやっているというのだから驚きです。
何が驚きか。誰が見ても明らかなように、マリオカートのキャラクターを利用してサービスを提供し、利益を上げているのに、任天堂に無許諾でやっていたという点です。

私のところにも、他社のキャラクターを利用してビジネスを行いたいという相談があります。
しかしどのご相談者も、他社のキャラクターを利用してビジネスを行いたいが、どのように許諾をとったらよいのか、ライセンス料はいくらぐらいなのかといった内容で、無許諾でやりたいが問題ないかという相談は皆無です。

報道では、話し合いを続けてきたけれども誠実に対応してくれず、やむを得ず提訴に踏み切ったということが伝えられています。

マリオカートのキャラクターを個人的な範囲を超え他社が事業で利用するというのは、大きな影響があります。
一つには、任天堂のサービスであると誤認されてしまうことです。
任天堂が提供しているサービスであると誤認されてしまった場合、もしサービスの内容が悪ければ、任天堂が長年の企業努力により作り上げた信用が損なわれます。
任天堂としては、自社の信用に影響を与えることは自社がきちんとコントロールしたいという気持ちが当然あるわけです。

もう一つは、利益についてです。
マリオカートのキャラクターを利用して得られた利益は、本来、任天堂も受けられるべきです。
報道の企業がどれほど利益を上げているか分かりませんが、重要なことは、これに黙認することで同様の他社が今後多数現れてしまうことを防止することです。

他社のコンテンツを利用してビジネスを行う場合は、他社の立場に立って他社の事情に深く配慮することが必要です。
結局それは、法律上のグレーゾーンを通らないということに他なりません。
事業を行うにあたって、著作権侵害にならないかもしれないが解釈によってはなるかもしれないという危ないラインを歩かないことです。

報道の企業の行為が著作権侵害なのか不正競争防止法違反なのかについては、以下の記事で詳しく述べられていますので、ご興味がある方は併せてご覧ください。

引用:任天堂が「マリカー」提訴、本当に「著作権侵害」「不正競争防止法違反」なのか分析

任天堂側は「著作権侵害」や「不正競争防止法違反」などを主張しているが、今回のケースで、どのような点がポイントになるのか。著作権の問題に詳しい齋藤理央弁護士に聞いた。

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AI弁理士、誕生!?

2016年06月03日 | 知的財産

「将来、AI(人工知能)によってなくなる職業に弁理士が入っているぞ。」という話を聞いたので、該当の記事を読んでみると、「弁理士などは機械にとって代わられる可能性が高い」とひと言、理由の説明もなく冷たく列挙されていました。

「自分の職業がなくなるかも」という身につまされる話を聞いたので、まじめにAIの可能性について考えてみました。

知的財産の仕事には、単純な作業も一部にあります。
一定の様式に従って決まった事項を記載するような作業です。
こういった単純な作業は、タイプライターがワープロに置き換わったように、AIにどんどんとって変わられる作業ではないかと思います。

しかし、単純な作業が簡単になったからといって、弁理士の職業がなくなるという結論には遙かな距離を感じます。
タイプライターがワープロに置き換わっても、ライターの仕事がなくならなかったのと同じだからです。

知的財産の仕事のなかで難しく時間や労力がかかるのが「判断」のところです。
例えば、商標登録の話でいえば、この商標が単なる品質表示にあたるのか、この商標が他社の登録商標と似ているのか、この商標が広く知られているのか、他社の商品と混同するかどうか、他社の商標権を侵害しているかどうかなどです。

弁理士の職業がなくなるというのは、この「判断」までもAIにとって変わられることを意味しているのでしょうか?
事業活動のなかには知的財産の創造・保護・活用のシーンがありますが、これらのシーンにおいて「判断」が不要になるのであれば、なくなるのは、弁理士どころの話ではありません。

特許庁も当然不要です。
例えば、特許庁の前にポストを置いておいて、そこに商標を書いた紙を入れると、AIが分析し、最適な商標について自動的に商標登録を付与してくれるようになります。
商標登録できない商標であれば、商標登録できる商標に変更し、それを商標登録してくれるわけです。(商標登録できる商標をAIが提案するシステムだと、それを採用するかどうかの「判断」が必要となるので、究極は勝手に変更するということに行き着くでしょう。)

知的財産の裁判所も不要になります。
同様に、裁判所の前にポストをおいておいて、そこに自分の登録商標と相手方の商標を書いた紙を入れると、AIが分析し、商標権の侵害かどうかをジャッジしてくれるようになるからです。

本当にそこまで現実的な将来として想定されているのだろうか?と疑問に思いました。

上記記事を見渡すと、「弁護士などは代替リスクが低い」とされており、その明確な理由は示されていませんが、弁護士は、ある行為や事実が法律の規定に該当するかどうかを判断することに高度な専門性を有する職業ですから、その根幹部分がAIにとって変わられにくいと判断されている、と考えられます。

商標登録を受けられるかどうかの判断や商標権を侵害するかどうかの判断は、同じような判断を必要とするものですから、弁護士の判断をAIに置き換えるのが難しいのだとすれば、同様に弁理士の判断も容易でないと考えることができます。

AIは万能ではありません。
計算が正確であり、大量のデータを処理できる点で優れているツールではありますが、人間と同じように、AIにできることもあればできないこともあります。

AIにできる部分はAIに置き換わるでしょう。
しかし、人はうまい生き物で、AIと戦うことを選択するのではなく、そこはAIに任せ、人にしかできない作業に特化して進化していく、環境適応能力に長けた生き物だと思います。
この点も、創造性と社会的知性と並んでAIとは異なる人の優れた能力であるということがいえます。

それを考えると、現在行っている弁理士の仕事の多くがAIに置き換わるかもしれませんが、弁理士も、そうしたAIのインフラの上に、人にしかできない知的財産の仕事を行っていくように業態が移り変わっていくでしょう。
AIによって弁理士の業態が変わることはあっても、弁理士がAIに置き換わるというほど神格化される技術ではないと考えます。もちろん、他の多くの職業についても同様です。

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